Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【胃がん】ピロリ除菌と胃カメラで予防&早期発見

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 バリウム検査は、X線画像に映る凹凸で病変を見つけるため、凹凸がないような早期の病変は見逃しやすい。武藤氏のがんは早期のスキルス性胃がんで、この点についても「胃粘膜の色が少し違っていたんです。凹凸がないから、バリウム検査では絶対に見つからなかった」と週刊ポストで語っています。

 ピロリ菌感染がある場合、除菌した上で、定期的に胃カメラ検査を受けていれば、怖いスキルス性胃がんの早期発見も可能なのは、このような理由から。どちらが欠けても、よくないのです。

 除菌は、抗生物質を1週間飲むだけ。服用中は下痢などでお腹がゆるくなることもありますが、まずピロリ菌の検査をして、陽性の方は除菌しましょう。除菌に成功すれば、胃がんのリスクは減ることが期待できますが、感染の履歴が消えるわけでなく、胃がん検診も欠かせません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。