薬に頼らないこころの健康法Q&A

「法学部に進んだのに作家を志望する息子にどう声をかけるべきか」

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 新聞記者として長く勤めた後、小説家に転じた井上靖は自らの乱作時代を振り返ってこう語っています。

「その時期を才能だけで切り抜けて、一生書いていくというのは難しい。才能が早く出て、社会に出ないままに作家になってしまう人はいるけれど、本当に苦しいだろうな。自分は少なくとも半生を社会で暮らし、書きたいものをもって出発している。それは幸運だったと思っている」(黒田佳子「父・井上靖の一期一会」から)

 まず社会に出て独り立ちさせましょう。そうすれば小説のネタが見つかります。若いうちこそ、ネタを仕込む時期なのです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。