薬に頼らないこころの健康法Q&A

誰もが通る「同郷の友達と心が離れていく」違和感と解決法

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 仕事仲間以外で友達ができる場合もあります。でも、学生のときのように始終会うわけではなく、わざわざ「次はいつ会おうか」というようなアポイントをとらなければなりません。まるで仕事での面談予約のようなよそよそしさです。

 それに、都会で知り合う人には、それなりの警戒心も必要です。学生時代のクラスメートと違って、他から噂が耳に入ってきません。「その人のことを他の人がどう思っているか」を知り得ない状況で、新たに人と知り合うことになります。ここには、故郷の幼馴染みにはない危険がはらまれることも確かです。

 結局のところ、都会では誰もが人を完全には信用していない状況で、それにもかかわらず人と関係して生きていくことになります。ここに、都会特有のストレスがあります。緊張感や警戒心をかたときも解くことができないのです。

 私としては、A君、B君、C君とはこれからも時折会うことをお勧めします。都会というジャングルで生き延びていくには、仲間が必要です。彼らとは高校時代のような一体感はなくても、少なくとも互いに腹を探らなければならないような警戒心は持たなくて済むでしょう。

 同じボールを追いかけた思い出を胸に秘め、今は少しよそよそしいでしょうけれど、彼らとは細く長い連携を維持してください。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。