Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【費用対効果】期待の高額新薬より健診で早期発見&治療

生存期間延長しても…(C)日刊ゲンダイ

 割引分は、国民一人一人の保険料です。このような薬が普及すればするほど、保険財政はパンクしかねません。費用対効果が議論されるのはそのためです。それは“お上の理屈”ですが、患者さんにとってもそのような視点を持つことは大切でしょう。

 オプジーボはまず皮膚がん(メラノーマ)に承認され、肺がん(小細胞肺がんという特殊なタイプを除く進行肺がん)にも認められました。

 メラノーマは5年生存率が1割ほどの難治がんですが、国内臨床試験では4人に1人のがんが縮小。昨年の米国の臨床腫瘍学会では、進行非小細胞肺がんでオプジーボを投与したグループは従来の抗がん剤グループに比べて、全生存期間の中央値が3カ月ほど延びて12カ月になったことも話題になりました。

 治療の難しい末期がんの方にとっては、新薬は希望の光です。それが大幅な割安の負担で使用できるとなれば、患者心理として使いたくなる気持ちが生まれるのは理解できます。しかし、データが示す通り、“万能薬”ではありません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。