多くの人が誤解…糖質制限で治る糖尿病、治らない糖尿病

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しかも、田中さんは「糖尿病の合併症は徐々に進行するから、ヤバくなったら気付くはず」と思い込んでいた。

「それも間違いです。糖尿病の合併症は昨日まで何でもなかったのに突然失明したり、人工透析になったりするのです。神経障害の影響で軽い心筋梗塞や脳梗塞が繰り返されていたのに気付かず、突然死する方もいます」

■唯一無二の治療法にあらず

 では、どの段階なら糖質制限で元の健康な体に戻せるのか? ヒントは原爆の影響を受けている可能性がある人を対象にした研究にある。糖尿病を発症した人と、しなかった人各1428人に対し、28年間、空腹時血糖値とブドウ糖負荷試験を行った。

「糖尿病を発症した人は発症12年前から血糖値が上がり始め、3年かけて境界型糖尿病に突入しています。この段階なら、糖質制限だけで健康体に押し戻せるかもしれません。しかし、その3年後には血糖値が急上昇し、一気に糖尿病になっています。こうなると糖質制限中は血糖値を抑えられても、例えばかけそば1杯で血糖値が200を超えるようになる。これは健康な人にはみられない状態です。この段階は糖質制限だけではダメで、血糖コントロールしつつ、別の病気に備えてあらゆる手段を使うべきです」

 糖質制限を糖尿病の唯一無二の治療法と思い込むと、命取りになりかねないのだ。

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