また、庶民に多い病気の種類も、かつての日本と似ています。公衆衛生がまだ不十分なことで、子供の心臓疾患や、リウマチ性の心臓弁膜症が多いのです。これは、日本でいえば昭和40~50年ごろに多かった病気です。
リウマチ性の心臓弁膜症は、いわゆる「関節リウマチ」とはまったく関係ありません。溶血性連鎖球菌への感染によって起こる「リウマチ熱」の炎症が心臓の弁膜まで及び、数年から数十年かけて弁が炎症による急激な劣化や硬くなって機能しなくなる硬化を来し、狭窄や閉鎖不全を起こす病気です。血液の循環がうまくいかなくなり、動悸や息切れなどの症状が表れます。放置しておくと、心臓の負担が増えて心不全を起こしたり、突然死の原因になることもあります。
現在の日本では、学校検診の充実や抗生物質の進歩によって、ほとんど見られなくなりました。若いころの溶血性連鎖球菌感染に対し、早い段階から抗生物質による介入が行われ、感染症がかなりコントロールできるようになっています。感染症による炎症が、心臓の弁まで進まなくなったのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」