天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「突然死なら苦しくない」は大間違い

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

「ピンピンコロリ」という言葉があります。年をとっても元気にピンピンと活動して、最期はコロリと安らかに逝く――。そんな亡くなり方のことです。病気による苦しみや痛みを感じることもなく、周囲に介護の負担をかけることもない。世間では「理想の終焉」だと喧伝されています。

 しかし、これは大きな間違いです。ピンピンコロリを狙って亡くなるなんてことは、ほとんど不可能といえます。

 ピンピンコロリにいちばん近い亡くなり方は、致死性不整脈や心筋梗塞といった心臓疾患による突然死だという意見を多く目にします。たしかに、急に発作が起こってそれほど苦しまずに突然死を迎えるケースもありますが、それはあくまでも極めてまれな特殊例です。ほとんどの場合、ウッと発作がきてそのまま苦しまずに亡くなるなんてことはまずありません。

 心臓疾患によって、苦しくも痛くもなく突然死するケースは、パチンコでいえば、開店直後に1回転させただけで確変を引き、そのまま閉店まで出続けるようなもの。これはほとんど奇跡に近いことで、そんな特殊例を狙って実現できるわけがないのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。