あの話題の治療法 どうなった?

20年前の最新がん治療「温熱療法」なぜ尻すぼみになった

渋谷青葉台内科小児科クリニックの安田浩康院長とハイパーサーミア機器(提供写真)

 ところが1993年以降、治療に使用する病院が半減してしまう。理由のひとつは、ある米国の研究論文だ。

「1991年、米国腫瘍放射線治療グループ(RTOG)が2本の論文を発表しました。『頭頚部がん、乳がんに対して、放射線療法+温熱療法をするとどのくらいの上乗せ効果があるのか』を問うたものです。これが、いずれも効果なしと結論付けられた。この発表以降、米国や日本の医師、病院が、温熱療法への意欲を低下させてしまったのです」

 こう言うのは、いまも多くのがん患者に温熱療法を施し、大きな成果を挙げている「渋谷青葉台内科小児科クリニック」(東京・目黒区)の安田浩康院長だ。安田院長によると、その後の検証で米国の研究がずさんだったことがわかったという。

「温熱療法は、電極でがんを挟んで周波数8メガヘルツのラジオ波を照射することで、がん細胞を43~44度程度まで上昇させ、熱に弱いがん細胞を死滅させます。ところが、米国の論文の臨床データを見ると、臨床試験に未熟な装置を使っていて、本来の温度まで到達できた患者は265人中10人とわずか4%しかいなかった。しかも、68%の症例で温熱療法を中断するというお粗末な臨床試験だったのです」

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