がんと向き合い生きていく

精巣腫瘍 薬だけで最も早く治せるがんになった

都立駒込病院名誉院長・佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 このままではEさんの命が危ない、そして開発された有効な治療法がここにある……。いろいろな議論がありましたが、結局、支援団体の声もあって、まず治療してみることになりました。そして、見事にたった1クールで肺の“影”はすべて消えたのです。

 Eさんは、さらに治療コースを重ねてから帰国されました。余談になりますが、Eさんは入院中に担当していた看護師さんを「お嫁さんにして帰る」と言いだし、ビックリした看護師さんが逃げ隠れしていたのを思い出します。

 精巣腫瘍は、睾丸に発生するがんですが、20~40歳に最も多く見られます。比較的まれながんですが、この年代の男性では最も多いがんなのです。痛みはなく、睾丸の腫大に気づくことが多いようです。原因ははっきり分かっていませんが、停留睾丸(胎児のころ、精巣が陰嚢の中に下りてこないまま途中で止まった状態)や打撲などが考えられています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。