Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

雛形あきこさんは除菌成功のピロリ菌 胃がんとの関連は

ピロリ菌の除菌な成功した雛形あきこさん(C)日刊ゲンダイ

 確かに、震災後の胃潰瘍患者は83%がピロリ菌感染者でした。一方、陰性の人には、胃潰瘍がほとんど発生しませんでした。つまり、ピロリ菌感染に加えて、ストレスが重なると、胃潰瘍のリスクが高まるのです。

 塩分の多い食事や喫煙も胃がんのリスクといわれます。この2つも同様で、それぞれ単独より、ピロリ菌感染と重なる方がリスクが高い。「ピロリ菌感染+喫煙」の人は、「ピロリ菌感染ナシ+非喫煙」の人に比べて11倍も胃がんになりやすいのです。

 ピロリ菌感染は胃がん発生のベースで、胃がんの人は感染率が95%なのです。ただし、感染者が実際に胃がんを発症するのは1%以下。それでも、感染していなければ、ほとんど胃がんにならないため、除菌治療が重要視されるのです。

 ピロリ菌は、衛生状態がよくない水や食べ物から感染して、胃の粘膜にすみつきます。上下水道が整備され、井戸水を飲まなくなったことや、冷蔵庫の普及で食べ物の保存状態がよくなり、ピロリ菌の感染率が低下しました。若い人ほど感染率が低いのはそのため。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。