がんと向き合い生きていく

正常な組織は守る 副作用が少ない3つの最新放射線治療

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 Yさん(65歳・男性)は58歳の時に前立腺がんの診断で放射線治療を受け、担当医から「がんは完治した」と言われています。ところが、62歳の頃から便に血が混じることがあり、内視鏡検査では直腸からの出血で、放射線が当たったための後遺症とのことでした。その後も時々出血することがあり、一時は輸血も必要なほどでした。

■正常な組織部分に放射線を当てないことが重要

 放射線治療は、がんに放射線を当てて切らずに治す治療法です。多くのがんに対して効果があり、がん細胞のDNAに直接作用して細胞を死に至らしめるのです。ただ、がんが限局していればよいのですが、バラバラとたくさんある場合はなかなか治療が難しくなります。また、死滅させたいがん細胞だけではなく、がん以外の正常な組織部分にも放射線が当たってしまうことが一番の問題です。

 もちろん、がんには効率よく、正常組織には優しく、副作用が少なくなるように工夫されています。最近では、副作用を少なくするために「強度変調放射線治療」というがんだけを狙い撃ちする精度の高い治療ができるようになりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。