天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

肺、胃腸、心臓の病気は互いに大きく関わっている

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 COPDがあると、心血管疾患を合併する確率も高まります。COPDの患者は、状態が安定していても約30%がうっ血性心不全の所見があるとされています。また、COPDがない人に比べ、心筋梗塞が20~30%多いという報告もあります。

 COPDで慢性的な呼吸不全になると、肺で効率よく酸素と二酸化炭素の交換ができなくなり、血液中の酸素量が低下します。そうした低酸素血症が長く続くと、心臓と肺を結んでいる肺動脈が細くなり、肺高血圧症を起こして心臓に大きな負担がかかります。

 すると、冠動脈の動脈硬化が進行したり、心不全を招いてしまうのです。また、COPDによって消化器の状態が悪化すると、腸肝循環がうまくいかなくなります。体内の生体物質や薬物などが、胆汁と一緒に十二指腸に排泄された後、腸管から再吸収されて肝臓に戻るサイクルのことです。肝臓ではさまざまな酵素が作られ、生命を維持しています。腸肝循環のバランスが崩れると、細胞外基質を溶かす酵素の活性が上がって動脈の壁が脆弱になってしまうという指摘もあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。