なぜ、ここまで大がかりな手術をしなければならないかというと、乳がん手術後の放射線治療による石灰化から起こった心臓病というのは、「中途半端に終わらせると、術後1カ月以内の死亡率が非常に高くなる」というデータがあるからです。放射線と癒着の影響で心臓が広がりにくくなる拡張障害が起こっているため、適当なところで手術を終わらせて病気を残してしまうと、血圧がきちんとコントロールできなくなるなどして悪化しやすくなります。「まあこんなところでいいか」で済ませると、大きなしっぺ返しがくるのです。こうした患者さんは決して多いわけではありませんが、平均で年間2人ほど手術をしています。たしかに大変ではありますが、すべてしっかり終えて、患者さんが見違えるほど回復していくと、大きな手応えを感じます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」