天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢者の感染性心内膜炎の緊急手術は難易度がハネ上がる

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 弁膜症の手術といえば、先日、81歳の女性患者さんに3度目の弁置換術を行いました。足かけ23年ほどの間に、すべて私が執刀した患者さんです。

 ご本人も慣れたもので、「また、先生にお世話になります。お願いね」と落ち着き払っていました。

 最初の手術は、23年ほど前で、僧帽弁を機械弁に交換しました。それから8年ほどたった頃、交換した機械弁に血栓がたまってしまい、今度は生体弁に交換する手術を行いました。

 機械弁は耐久性が高く頑丈ですが、生体構造とはかけ離れた“異物”なので弁の周辺に血栓ができやすくなります。術後に血を固まりにくくする薬を服用しますが、それでもやはり血栓はできやすくなってしまいます。

 一方の生体弁は、ブタや牛の弁などを人間に使えるように処理したもので、生体構造に近いことから血栓ができにくい利点があります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。