天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

30年後も問題ないのはエビデンスにのっとった手術の賜物

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 手術は無事に終わり、足の血流もしっかり改善しました。

 それから十数年後のことです。その頃、私は新東京病院に移って心臓血管外科部長を務めていました。ある日、自然気胸で入院されていた患者さんが私に会いたがっているというので、病室まで伺いました。話をしてみると、先にお話しした足の動脈のバイパス手術を行った患者さんの息子さんだったのです。

 後日、かつて私が手術をした父親と再会しました。そのとき、「手術から10年以上経っても足はまったく問題ない。快調そのものだ」とお話しされていました。その後、その患者さんとは年賀状のやりとりが続き、手術から25年ほど経った頃に連絡をした際も、「足は問題ない」とのお話でした。患者さんは当時80歳を越えていましたが、それでもトラブルが起こらなかったのは、最初の手術で“教科書”に書いてあるようなエビデンスにのっとった解剖学的な方法を行ったからに他なりません。それが、いかに患者さんにとって良い治療だったのかを思い知らされました。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。