昔から、がんは「がん=死」のように恐れられ、その告知については「死を知らせることは残酷である」と考えられてきました。20世紀の大半、1985年ごろまでは「がんという病名は知らせない」とされ、がんであることを隠し、どんな状況になっても「絶対に良くなる」「治るために頑張ろう」と言って治療してきたのです。
その後、「乳がん」などの患者には分かってしまう“隠し難いがん”について、病名は告知するが、予後(治るのか? 治らないのか? どのくらい生きられるか)については知らせない時代がありました。85~2000年ごろまでが該当します。
たとえば胃がんの患者さんの場合、担当医は患者さんが検査で別室に行っている間に奥さんを呼んでこんなやりとりをしていました。
「旦那さんは胃がんです。肝臓にも転移があります。ご本人にはどう話しましょうか?」
がんと向き合い生きていく