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抗がん剤は効くか? 治療法の選択は「正しい情報」から判断

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 「抗がん剤は効かない」と書かれてある本では、「臨床試験は実施されているのですが、被験者の数が少なく、データを解析しても、その信頼性に(人数の点から)問題が残る」と言っています。しかし、科学的に抗がん剤治療の延命効果が少ない人数で証明されたことによって、くじ引きで治療しない群に振り分けられることは、該当する患者にとって不利益であることが明らかになりました。つまり、これ以上たくさんの患者に試験に参加してもらうのは、人道的にも許されないことなのです。

 ちなみに、前述した海外の3つの臨床試験の中のひとつでは、試験途中で「抗がん剤治療群の生存期間が明らかに長い」という統計結果が判明したため、その時点ですぐに「治療しない群」に振り分けることを中止し、その後は「すべて抗がん剤を行う群」に変更されています。

 最近の新しい抗がん剤併用療法の報告では、生存期間の中央値はさらに長くなっていて、少数例ではあるものの長期生存(5年以上)も得られています。また、手術不能と判断される大きな胃がんが治療効果によって手術可能まで小さくなり、その後に手術が行われてさらに長く生きられる患者もいます。

 治療法を選択するには、まず「正しい情報」から判断することが大切です。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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