がんと向き合い生きていく

恐怖のない安寧な死はある 104歳の女性患者に教えられた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私は約40年間、がん患者の診療に携わることができ、幸いにも多くの患者さんががんを克服されました。しかし一方で、残念ながらたくさんの方をみとってもきました。進行したがんで人生を中断され、「生きたい」のに無理やり、死ななければならなかった方々の無念さが、私の身に染み込んでいる気がするのです。

 宗教を信じない人が多い現代で、最近は「治らない」ことや「短い命」であることが患者に告げられています。

 患者は心安らかに過ごせているのだろうか、死の恐怖にさいなまれているのではないか……そんな思いが、いつも心にあります。

 それにしても、死とはすべてに恐怖があるのだろうか? 自然死では恐怖はなく、安寧な気持ちで亡くなっているのだろうか? そんなことも考えます。

 ずっとがん死をみとってきた私は、介護老人施設に一時勤務した時、数人の自然死をみとる経験をしました。ほとんどぼけ症状の見られない104歳になるRさん(女性)は、やや大柄な顔立ちで白いぼたんのような方でした。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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