「熱でがん細胞の膜が破れると、中身が飛び散ります。すると分かりやすく言えば生ワクチンを接種したのと同じようになる。それまでがん細胞を認識していなかった免疫細胞が教育を受けたり活性化することで、新たにがん細胞を攻撃する可能性があると考えられています」
連鎖的に免疫細胞が活性化すれば、近赤外線が当たっていないがん細胞も叩けるというわけだ。EGFR抗体は分子標的薬として使う場合よりも少ない投与量なので、人体への負担は軽いという。光増感剤も時間がたてばいずれ体外に排出されてしまう。
合併症では、がんの中に血管が通っていたら出血したり、がんが死滅した場所の感染や痛みが起こる場合が考えられ臨床試験でも認められている。近赤外線は一般的に皮膚から3~4センチまでしか届かないが、他にどんながん種の治療に使えるのか。
「がん細胞に発現しているタンパク質に合わせて抗体を変えていけばいいですし、光の種類や強さによっても体内に入る深さが違います。消化管などは内視鏡で光を当てることができます。光の種類に合わせて反応する光増感剤に変えればいいのです。この原理を用いれば、さまざまながん種の治療に応用できます。早期がんの手術の代わりになる可能性もあるのです」
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