天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

食事と心臓疾患の関係 研究結果に右往左往してはいけない

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 また、そもそもそうした研究結果を“無視”したとしても、いきなり危険な状態を招くようなことにはなりません。ある程度、食事を規則正しく取ったり、偏ったものばかりを食べ過ぎないよう自己管理したり、健診で指摘された食事内容を改善していくといった一般的な取り組みを行うだけで十分といえます。

 食事と病気に関する研究で出てくるデータのほとんどは、いまはまだ健康な人をターゲットにして、将来的に病気にならないよう1次予防に導くためのものです。研究結果に焦って右往左往する必要はないのです。

 医学の進歩という視点から考えてみても、そうした1次予防に対し、「いまある特定の病気をどのようにして治療したり、改善したりすればいいか」という2次予防の方が圧倒的に進歩のスピードが速いといえます。つまり、仮に1次予防がうまくいかずに心臓疾患を発症したとしても、進歩し続けている治療によって深刻な事態は避けられるようになってきているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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