がん発症の妻にしてあげた10のこと

<7>誕生日を祝う「菊交じりの花束を贈って大泣きされた」

小宮孝泰さん(C)日刊ゲンダイ

「それまでの誕生日にも何度か花束を贈っていましたが、その時は慌てていたので花屋さんで出来合いの花束の中身を確認しないまま買ってしまった。その中に菊の花が交じっていたのです。いつもは僕のセンスの悪さを笑って済ましていた彼女でしたが、この時ばかりは大泣きされました。『私はまだ生きているのよ』と訴えかけるような目でした。怒っているのではなく、妻である私のことを考えてくれていないという悲しみの涙でした。妻は離婚した両親のため、年の離れた弟の面倒も見てきた。人のために何かをしてあげるのが身についている女性で、そのために人が何を欲しているかをよく観察していたのです。でも、私にはそれができなかった。世の中の男性の多くも耳が痛いと思います」

 小宮さんが大好きな落語の稽古を始めても、一番身近の彼女が最も厳しい批評家を務めてくれたそうだ。

「この失敗があってからは誕生日が近づくと、何をプレゼントするか悩みに悩みました。そんな時に役者仲間の築出静夫くんの奥さまに相談したら、洋物雑貨『アフタヌーンティー』のティーカップセットを薦めてくれたのです。それまでの僕は高価なものやブランド品を贈れば女性は喜ぶものと勘違いしていましたが、ティーカップを贈ると妻はとても喜んでくれた。妻は昼下がりの午後に紅茶を飲むのが好きでした。まったりとした時間を過ごすのが彼女の幸せそのものであり、僕がそんな彼女のためにティーカップを買っていったことを喜んだのでしょう」

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 普段使う生活用品を買っていったのは、まさしく“見てくれている”ことの表れ。これこそが彼女の望んだ心配りだったのだろう。(※編集部注)

 =つづく

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小宮孝泰

1956年、神奈川県小田原市生まれ。明治大学卒。80年、渡辺正行、ラサール石井と「コント赤信号」でTVデビュー。91年に佳江さんと結婚。2001年、31歳の佳江さんに乳がん発症。12年に永眠。今年9月に、出会いから別れまでの出来事をつづった「猫女房」(秀和システム)を上梓。

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