Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

吉田拓郎さん喉のがん告白…放射線治療の期間は短縮傾向に

喉のがんを告白したシンガー・ソングライターの吉田拓郎(C)共同通信社

 従来は25回ないし30回が一般的でしたが、1回の線量を上げて16回ないし20回で完了。もちろん、回数が多い時と治療効果は同じです。2週間の治療期間短縮は、大きいでしょう。

 前立腺がんの放射線治療は特に顕著で、36~38回と2カ月かけて行っていたのが、わずか1週間の5回に。治療効果は手術と同等で、尿失禁などの後遺症はありません。どれも、通院で照射できます。

 半年も後遺症が続いたとすれば、より広い範囲への放射線照射が考えられ、喉頭がんではなく、咽頭がんか特殊な喉頭がんだったのかもしれません。喉頭がんより副作用は強くなりますが、それでも多くは大体3カ月ほどで解消します。

 拓郎さんは03年に肺がんを公表。それをキッカケにたばこをやめたそうですが、肺がんの人は咽頭がんなどの頭頚部がんを併発しやすい。喫煙が両方のがんのリスク因子だからです。同じ理由で食道がんと咽頭がんも、飲酒と喫煙がリスク因子で、併発しやすい。

 では、咽頭がんを早期発見するには、どうすればいいか。禁煙や適量な飲酒を心掛けるのが第一です。それともうひとつは胃カメラでしょう。人間ドックなどで定期的に受けている人は、担当医に「咽頭も診てください」とお願いするのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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