看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」

治療をせずに死を急ぐ主人には家族に対する愛はないのか

玉置妙憂さん(C)日刊ゲンダイ

 玉置さんは、このご主人の説得に折れた。

「でも当初、死を急ぐ主人には家族に対する愛はないのか、と思いました。私自身、親戚からも批判されましてね」と、回想する。

 しかし、自宅に閉じこもり、ため息をつきながら、こつこつフィルム整理を行っている主人の後ろ姿を見て、「死を迎える人の意思を尊重しなければと思いました。そのためなら、『治療をしない選択』も、治療のひとつではないかと納得したのです」。

 主人は、「いつか私の写真を出版してくれ」と、言い残し、枯れ木が折れていくような自然体で、62歳の生涯を閉じたという。

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玉置妙憂

玉置妙憂

東京都生まれ、53歳。専修大学法学部卒業後、法律事務所に勤務。長男の重い病気が動機になり30歳の時、看護師資格を取得。46歳の時に、がん闘病の主人を自宅でみとった後、高野山真言宗に得度した。臨床宗教師としても講演、執筆活動を行っている。「大慈学苑」主宰。

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