玉置さんは、このご主人の説得に折れた。
「でも当初、死を急ぐ主人には家族に対する愛はないのか、と思いました。私自身、親戚からも批判されましてね」と、回想する。
しかし、自宅に閉じこもり、ため息をつきながら、こつこつフィルム整理を行っている主人の後ろ姿を見て、「死を迎える人の意思を尊重しなければと思いました。そのためなら、『治療をしない選択』も、治療のひとつではないかと納得したのです」。
主人は、「いつか私の写真を出版してくれ」と、言い残し、枯れ木が折れていくような自然体で、62歳の生涯を閉じたという。
看護師僧侶「死にゆく人の心構えと接し方」