K医師は、ご近所に住むAさん(75歳・女性)の胃がんを診断し、病院に紹介しました。幸い手術でがんは全部取り切れましたがステージは3で、再発予防のためには内服抗がん剤が有効です。K医師もそれは分かっていますが、Aさんが間違えずに内服してくれるかが心配でした。Aさんは認知症があり、物事を理解する能力がかなり落ちていたからです。
そこでK医師は、認知症のある患者に対して抗がん剤治療をどうしているのか、大学の後輩で現在はある大学の腫瘍内科に勤務するN医師に電話してみました。すると、意外な返事が返ってきたといいます。
「物事を判断できない人が、がんの治療をして余命を延ばす意味があるのでしょうか? 認知症の人ががんの治療をして命を永らえる、その意味があるのでしょうか?」
答えに窮したK医師を尻目に、N医師はさらにこんな話を続けたそうです。
がんと向き合い生きていく