患者も知らないAPD

明確な治療法がなく生活上の不便を解消するテクニックが重要

「ミルディス小児科耳鼻科」院長の平野浩二氏/(提供写真)

■診断書提出で退職勧奨を受けたケースも

「ある患者さんは、APDの診断書を会社に提出したことで、職場がさまざまな配慮をしてくれるようになり、以前より格段に働きやすくなったそうです。これはいい例ですが、中には診断書を提出したことで、『治らないのなら退職してくれ』と退職勧奨を受けてしまったケースもあります。これは悲しいことですが、やはり長く働き続けられる職場に行くためには、聞こえをあまり重視しない仕事や、静かな環境で働ける職場を選ぶことも大事になってくるでしょうね」

 APDは、聴力に異常はなく、音は脳まで伝わるものの、脳での言語処理に時間がかかるために、うまく理解できない状態であると考えられているが、明確な原因が分かっているわけではなく、治療法も確立されていない。聞いたことを覚えていられない短期記憶の障害など、発達障害と合併していることもあり、その研究もまだ始まったばかりだ。

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