Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

E・ジョンは失禁を告白 前立腺がんの手術後はオムツ生活に

前立腺がんの全摘手術を受けていたことを告白したエルトン・ジョン (C)Geisler-Fotopress/DPA/共同通信イメージズ

 男性の排尿は、尿道括約筋と前立腺が調節しています。そこで注目が、前立腺がんが生じる部位です。多くは、尿道括約筋と接する下側で、そうすると、手術では尿道括約筋からはがすような操作を行うことが多くなるため、尿道括約筋が障害されやすい。

 手術後には2人に1人の割合で、せきやくしゃみをしたときなど腹部に力が入ったときに、チョロッと漏れることが多く、医学的には腹圧性尿失禁といいます。術後10日でのステージなら、失禁は仕方なかったかもしれません。

 症状は、時間とともによくなり、半年ほどでほぼ改善するといわれますが、1割はその後も尿漏れが残るという報告があります。尿漏れパッドが欠かせない生活は、ショックです。

 前立腺の周囲には、勃起に関係する神経が、くまなく走っていますから、2つ目は性機能障害。年齢や手術前の勃起能力によっては、神経温存手術で能力維持は不可能ではありませんが、完全に維持するのは難しいのが一般的です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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