Dr.中川 がんサバイバーの知恵

松下奈緒演じる腫瘍内科医 日本の早期治療では不在の悲劇

ドラマ「アライブ」で腫瘍内科医を演じる松下奈緒さん(C)日刊ゲンダイ

 しかし、日本の腫瘍内科医は、診断と根治治療の選択にあまり関与していないのが現実。がん治療は早期発見を目指し、検診が普及していて、たとえば胃がんならX線か内視鏡で検査を行います。特に内視鏡で異常が見つかると、すぐに異常部位を採取して生検に。ここを担当するのは外科医で、早期の胃がんと分かれば手術です。

 便潜血で潜血が認められ、大腸内視鏡検査を行うのは多くの場合、外科医。早期の大腸がんと分かれば、やっぱり手術です。

 米国のがんセンターなどでは、状況がまったく違います。初診のがん患者が、外科医のほか放射線腫瘍医、腫瘍内科医の3者面談で患者の意向を聞きながら、治療法が選択されることが珍しくありません。北欧をはじめとする欧州は、放射線腫瘍医と腫瘍内科医が兼務されている国も多くあります。

 早期がんは、手術が中心で薬物治療が不要。そうすると、腫瘍内科医は利益相反がなく、中立的な立場のレフェリーです。早期の診断と治療に、腫瘍内科医がかかわるメリットは大きいのですが、日本の早期治療では残念ながらそうなっていません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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