Dr.中川 がんサバイバーの知恵

松下奈緒演じる腫瘍内科医 日本の早期治療では不在の悲劇

ドラマ「アライブ」で腫瘍内科医を演じる松下奈緒さん(C)日刊ゲンダイ

 腫瘍内科医が広がる前は、外科医が抗がん剤を担当することが珍しくありませんでした。今でこそ一定の条件をクリアした化学療法室で抗がん剤の点滴を行うと、外来化学療法加算が得られますが、そうでなければ、薬価との差益がなく、病院としてはほとんど利益が得られません。

 手術には、大きな利益があります。外科医が抗がん剤を担当してきたのは、その利益の中での“サービス”という面があったのかもしれません。がんを根治できるのは手術と放射線ですが、がん治療は手術が7割、放射線は3割。欧米は逆なのに、手術に偏るのは“中立的なレフェリー”が不在で、外科医が主導してきた影響が多分にあるでしょう。

 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など最新の薬剤は、免疫異常など細心の注意が必要な副作用が見られます。その管理は外科医の片手間では難しい。がんの薬物治療は、腫瘍内科医がいる施設で受ける方が無難です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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