専門医が教える パンツの中の秘密

陰嚢の裏側に暗紫赤色のブツブツが…被角血管腫の特徴とは

写真はイメージ

 いずれにしても良性腫瘍で無症状のことが多いので、特に問題がなければ放置しておいてかまいません。ただし、血管にできる病変なので、破れて出血で下着を汚してビックリして受診する患者さんもいます。出血を繰り返したり、美容上(見た目)で治療を望むのであれば、レーザー治療や電気焼灼などで除去できます。陰嚢の皮膚は傷痕が目立ちにくいので、治療後の痕はほとんど分かりません。

 一方で見逃してはいけないのは、被角血管腫とファブリー病との関係です。ファブリー病は、体内で「GL―3」という糖脂質を分解する酵素(α―GAL)の働きが弱いか、酵素がないためにGL―3が全身の細胞や臓器に蓄積して、全身にさまざまな症状が出現する難病です。

 症状は一度に出るのではなく、順番に出てくるのが特徴です。小児期や思春期に表れやすい代表的な症状のひとつが被角血管腫なのです。ファブリー病では「びまん性被角血管腫」と呼ばれる赤紫色の発疹が、特にお腹、お尻、陰部などに出現します。そして初期の兆候で表れるので、推定的診断として重視されています。しかし、軽度では老人性血管腫と酷似しているので鑑別には注意が必要になります。

 大人になって陰嚢にできる赤いブツブツはあまり心配ない、子供の陰部に赤いブツブツができたらファブリー病を疑う、と覚えておきましょう。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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