「実は、高齢者の飲酒問題やアルコール依存症は関心が集まりにくいだけで、ここ数年で受診者は急増しています。そこに加え、新型コロナ対策からくる単身高齢者の孤立化は、酒量が増える要因になります」
こう指摘するのは、大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳氏(精神保健福祉士・社会福祉士)だ。
急増している半面、高齢者の飲酒問題やアルコール依存症は表面化しづらい。
その理由としてはまず、年金収入があるため経済的な底つきが起こりにくい。次に、定年退職後は行動範囲も限定され体力や認知機能の低下から外で問題飲酒につながる要因が少ない。仕事はリタイアしているので「欠勤が続いているが、どうなっているのか」など会社から問い合わせが来ることもない。
さらに、家族も「あの人が働かなくてもお金は入ってくるから」と、対策を講じないケースがある。むしろ「好きなお酒くらい最後は自由に飲ませてあげたい」「飲んでた方が静かだから」などと、積極的に飲酒を推奨する家族もいる。