貧困高齢者を苦しめる厚労省ルール 訪問診療医が実感した「新型コロナ」の教訓<上>

小堀鷗一郎医師(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスに対応するのは最前線で感染者の治療にあたる病院だけではない。介護施設や在宅医療でもコロナとの闘いは続いている。そこで浮き彫りになるのが、硬直した行政の限界だ。

 新型コロナウイルスの蔓延はリスクが高いとされる高齢者を動揺させている。

「高齢者のコロナ致死率は高いとされていますが、今までの季節性インフルエンザの死亡者数と比較しても、そんなに恐ろしいものではないでしょう。それでも未知のウイルスなので、過剰な反応が目立つように思います」

 遠くに住む息子や娘がコロナの恐怖をあおったため、デイサービスに通わなくなってしまった高齢者もいた。そのため週を追うごとに筋力が衰えていき、3カ月間で自宅の玄関までも歩けなくなってしまったという。人との接触が減ったため、認知症が進んだとおぼしき人もいた。

 小堀さんのチームが在宅医療で訪問する人は現在、およそ150人に上る。うち20人から「先生、コロナが怖いから来ないで。電話診療で薬の処方箋ください」と要望された。それを受け入れるのは簡単なことだが、思わぬ弊害もあったという。

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小堀鷗一郎

小堀鷗一郎

1938年、東京生まれ。東大医学部卒。東大医学部付属病院第1外科を経て国立国際医療センターに勤務し、同病院長を最後に65歳で定年退職。埼玉県新座市の堀ノ内病院で訪問診療に携わるようになる。母方の祖父は森鴎外。著書に「死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者」(みすず書房)。

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