上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

手術の延期は患者の安全と安心を守るために判断される

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 患者さんの状態に少しでも不安な点があれば、医療者側から伝えなければなりません。もしも術中に何らかのトラブルが発生したら取り返しのつかない事態になりかねませんし、術後に患者さんが会話もできない状態になってしまったら、本人はもちろん、ご家族に状況を説明するだけでも大変です。予定よりも患者さんの安全と安心を最優先する必要があるのです。

 いまは新型コロナウイルス流行の影響で、患者さんの手術に対する不安も大きくなっています。「いまの時期に手術なんてして大丈夫なのか」と考える患者さんはたくさんいます。それだけに、なおさら親切で丁寧な対応が求められます。

 今回だけでなく、予定手術が延期になるケースはままあります。手術の直前に患者さんがインフルエンザやヘルペス、ノロウイルスにかかって延期したケースもありました。当然のことですが、感染症がある状態で手術してしまうと、合併症を起こすリスクがアップするからです。その場合、感染症がアクティブな時期に手術はせず、必ずウイルスが完全に制圧されて感染症が治まるのを待ってから、あらためて手術を行います。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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