■たとえ前日でも手術は中止できる
ほかにも、「手術を受けるかどうか考え直したい」といった患者さんの訴えによって、延期されるケースもあります。そうした患者さんに対しては、あらためて納得してもらえるまで説明を繰り返します。患者さんの状態によって手術の危険度がどの程度かを示す「リスクスコア」をベースにして、なぜいまのタイミングで手術が必要なのか。心臓の状態を考えると手術を延期することで突然死リスクが高くなってしまう……といった説明を詳しく行い、リスクを共有するのです。
それでも、「まだ手術はしない」という選択をする患者さんもいらっしゃいます。そうした場合、もちろん患者さんの意思を尊重します。最終的に手術を受けるか受けないかは患者さんが決めることだからです。
手術を予定している患者さんに対し、私は必ず「たとえ予定日の前日でも、手術したくなくなったらいつでもやめていいんですよ」と伝えます。患者さんには、その直前まで手術を断る権利があるからです。そうした患者の権利を守ってくれる病院は「信頼できる施設」だと判断してもいいでしょう。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」