新型コロナ後遺症の正体

新型コロナから回復した人の3割以上に呼吸器の後遺症

中国・武漢の病院で新型コロナウイルスによる肺炎の患者の対応にあたる医療従事者(新華社=共同)

 インフルエンザなどのウイルス性肺炎や細菌性肺炎では、CT検査画像をでもほぼ完全に治っている人もいるが、このウイルスでは肺線維化が起こるので、完全に治らない人も多い。この肺炎では、12週間後に再度CT検査をする必要がある。中国のある研究では、患者70人のうち66人に、退院後もある程度の肺の損傷がみられるとしていた。

 さらに炎症により血液が固まりやすくなり、肺動脈内にできる血栓が肺末梢血流を減らし、慢性肺血栓塞栓症のような状態になることもあり得る。この肺組織そのものと肺血流の両方が傷つくことで、非常に深刻な後遺症生じ得る。

 若い人でも呼吸機能は低下し運動能力が落ちるので、欧米では運動選手の選手生命が失われることが懸念されている。新型コロナから回復した人の3割以上に何らかの呼吸器症状が残ると報告されている。また、中高年では、肺機能低下のみでなく右心不全、肺高血圧症が残ることも多い。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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