がんに強い「ハイパーサーミア療法」は効果的で懐にも優しい

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「温熱療法には、もうひとつ良い点があります。細胞には、皮膚や内臓の表面を構成する上皮細胞と骨や血液をつくる間葉細胞があります。上皮細胞は規則正しく結合し、間葉細胞はそうでなく運動能力を持っています。上皮細胞の悪性腫瘍であるがんは、周囲に浸潤する過程で上皮細胞としての性格を失い、浸潤に有利になるように細胞が運動能力を持つよう変化する。これを上皮間葉転換(EMT)と呼びますが、温熱療法はこれを阻害する働きも持っているのです」

 この治療法が素晴らしいのは、どのタイプのがんにも効果があり、腫瘍が大きければ大きいほど効果があることだ。

 しかも、副作用はあっても軽度だ。加温部位の脂肪がやけどする恐れがあり、引きつれを起こしてその部位の神経を刺激して痛みが出る。しかし、それも時間の経過と共に体内に吸収され痛みも消えるという。このため1990年、当時の厚生省が健康保険適用の治療法として認可承認している。

「この治療法の最大の問題は、費用と人手の割に保険点数が低いことです。治療は1回60分程度を週1回、8週間ぐらい行います。ところが、それに対する保険点数はおよそ9000点で9万円にしかなりません。そのため、病院によっては敬遠されてしまうのです」

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