がんと向き合い生きていく

便の検査で血が混じったら「どこからの出血なのか」が問題

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私が小学生の頃、先生から便をマッチ箱に入れて学校に持ってくるように言われ、便の検査が行われました。当時は、寄生虫を調べるためで、寄生虫かその卵がいた場合、それを駆除する薬を飲まされたと記憶しています。その当時、先生から便を持参するように言われると、私は前の晩から困りました。水洗便器のない時代なので、普段のようにくみ取り式の便器で用を済ませると、便は深い穴の暗闇に落ちてしまって採れません。便をわずかに採るためには、新聞紙を敷いて、そこにお尻を出して便をすることになります。私は便秘症ではありませんでしたが、敷いた紙の上にはどうにも便が出せません。当日の朝になって試してみましたが、やっぱりそれでは便が出ないのです。

 私は泣きそうになって、「便が出ない。先生が必ず持ってくるように言っていた。どうしよう」とうろたえました。すると、父が便所に行き、父の便をマッチ箱に入れて出てきました。そして、「これを持って行きなさい」と私に差し出したのです。私は喜んでマッチ箱をランドセルに入れて学校へ向かいました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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