外科手術は患者さんの負担をより小さくする「低侵襲化」の方向に進化していると、前回お話ししました。ただ、低侵襲化のベースになっている狭心症などに対する冠動脈バイパス手術や心臓弁膜症に対する弁置換術などは、どう処置すれば心臓の機能がしっかり回復するのかに関するエビデンス(科学的根拠)が積み上がっていて、基本的には完成された手術といえます。
そうした現状では、いまの若手医師たちが「新しい手術」を考え出したり、完成させることはできないのではないか。次代の外科医はどこを目指して進んでいけばいいのか、といった声も聞こえます。しかし、若手にはまだまだ開拓すべき医療がたくさんあるのです。
たとえば、われわれ人間が存在する限り、新たな病気は必ず表れます。寿命がもっと延びてさらに高齢化が進んだり、海外との交流がさらに進んで多様な人間が増えることで、これまで見たこともないような病気が表に出てくる可能性があるのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」