上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医療の将来のために「1県1医大政策」の精神を見直すべき

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■地方医療の疲弊を食い止める

 1県1医大政策は、最後に設立された琉球大学医学部が卒業生を輩出した87年に一区切りがついたといえます。一時は「医師の数を減らしたほうがいい」という声もありましたが、舛添要一氏が厚労大臣を務めていた時代にその意見は否定され、地方の医師不足を解消するために医学部の定員が増やされることになりました。さらに、安倍晋三内閣の頃に、東北医科薬科大と国際医療福祉大に医学部設置が認可され、この時点でかつての1県1医大政策の構想は完全に終わりを迎えたといえるでしょう。

 そうした流れの中で1県1医大政策という考え方がほとんど表に出てこなくなったこともあり、今一番脂がのって現場でバリバリ活躍している2003年以降に医師になった人たちは、1県1医大政策にまったく馴染みがありません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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