上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医療の将来のために「1県1医大政策」の精神を見直すべき

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 なおかつ、03年以降は医学部受験がさらに過熱して、「医師のつくられ方」が大きく様変わりしました。受験に強い中高一貫校が注目され、12歳で将来が決まってしまうような状況が生まれました。医学部に進む学生はそれほど貧しい家の人たちではなくなり、以前なら国公立大を選択していた学生も私立の医科大学に進学するようになりました。大幅な経済格差がなくなって、医師を目指す学生の意識も変わってきたのです。

 そんな時代だからこそ、1県1医大政策の精神を見直すべきだと考えています。医師になって自分が地方医療の疲弊を食い止める――。1県1医大政策がスタートした時期に医師になったわれわれの世代は、自分の経験をもとにしながら、そんな志を持った医師を育てていかなければなりません。

 次回は、私が考える案についてお話しします。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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