上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

新型コロナと闘ういまの日本には「柱」が見当たらない

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 マンガ、アニメ、映画で大ヒットしている「鬼滅の刃」には、新型コロナウイルスに打ち勝つために学ぶべき点が描かれている。前回、そんなお話をしました。

 物語の中で、主人公の竈門炭治郎は、鬼の始祖・鬼舞辻無惨を打ち倒すため「鬼殺隊」と呼ばれる人間を鬼から守るためにつくられた組織に加入します。その鬼殺隊には、「柱」と呼ばれる9人の幹部がいます。組織の中でも最上位の階級に位置する剣士たちで、それぞれが圧倒的な実力を誇っています。そんな柱のひとりが強敵の鬼と対峙した際に口にした印象的なセリフがあります。

「俺は俺の責務を全うする! ここにいる者は誰も死なせない!」

“リーダー”としての強い覚悟と責任を感じさせます。

 新型コロナウイルスと闘ういまの日本には、こうした信念を持った「柱」が残念ながら見当たりません。昨年7月、政府は新型コロナ対策分科会を立ち上げ、会長の尾身茂氏が旗振り役を務めていますが、広く国民に信頼されているかというと、そうとは言えない印象です。尾身会長以外の“顔”がなかなか見えてこないうえ、どうしても政府の意向を強く感じさせるからでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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