Dr.中川 がんサバイバーの知恵

元宝塚女優が急逝…甲状腺未分化がんを「最凶」と恐れる理由

68歳で亡くなった峰さを理さん(中央)/(C)ゲッティ/共同通信イメージズ

 対照的なのが、未分化がんです。乳頭がんをはじめもともとあった甲状腺の分化がんが、長い時間をかけて未分化がんに転化するといわれています。60歳以上に多く、突然、首が腫れて、急速に大きくなってきたことを心配して受診されることが珍しくありません。

 峰さんは、昨年1月に肩の違和感を心配されています。タラレバになってしまいますが、その時点なら未分化がんになる前の分化がんだったかもしれません。そのタイミングで治療ができていれば、治った可能性があったと思われます。

 未分化がんになってしまうと、進行が速く、手術と放射線、抗がん剤を組み合わせて治療しますが、放射線と抗がん剤は効かず、延命できるケースは多くはありません。峰さんも昨年7月の診断から5カ月、昨年末には余命3カ月と告げられたといいます。

 昨年のがん罹患数は101万人と予測され、甲状腺がんは1万8000人ほど。未分化がんは、甲状腺がん全体の1%ほどですから、きわめてまれながんでも、その悪性度は高い。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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