上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓と大きく関わっている脳梗塞は総合的な治療体系が必要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 これまではバラバラだった「脳」と「心臓」の分野それぞれの専門家が、脳梗塞に対して一緒になって対応していく。そろそろそのタイミングが熟してきたと感じています。

 脳梗塞に代表される脳血管疾患に対し、脳と心臓を含めた総合的な新しい治療体系が構築されれば、パンクが懸念されている国の医療費を大きく抑制できます。現在、脳血管疾患の医療費は国民の総医療費の4・2%を占めています。金額にすると約1兆8000億円に上ります。この数字は、純粋な脳血管疾患の治療に対する医療費で、脳梗塞によって必要になる可能性が高い介護や介助といった日常生活を送るためにかかってくる医療費は含まれていません。新しい脳梗塞の総合的な治療体系は、そうした費用も含めて大幅に全体的な医療費を削減できる可能性があるのです。

「隗より始めよ」という故事に倣い、いま私は脳と心臓の分野を統合した脳梗塞に対する総合的な治療体系の構築に着手しています。次回、詳しくお話しします。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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