Dr.中川 がんサバイバーの知恵

“予言”を上回る超回復 池江選手の五輪と発症年齢の関係

この笑顔に元気をもらった(C)共同通信社

 ですから、当時の「可能性」はパリを想定したものでした。池江さんと同じタイプの白血病を同じく骨髄移植で克服したJ2新潟の早川史哉選手(27)がピッチに戻るまで3年7カ月かかっていますから、2年余りでの五輪出場は驚異的といえるでしょう。

 その奇跡を現実にしたのは、池江さんの努力のたまものですが、医師からみて、その努力を可能にした大きな要因は、発症年齢だと思います。

 白血病は小児のがんの代表で、小中学生での発症も珍しくありません。もしもう少し早く、たとえば中学生くらいで発症していたら、移植前に必須の抗がん剤の影響を受けていたかもしれません。成長期に抗がん剤などを受けると、成長障害で低身長になることがあるのです。

 池江さんは18歳で発症し、早川さんの発症は20代。2人とも競技の中断を余儀なくされたとはいえ、体が出来上がっての発症だったのは、競技を続ける意味では不幸中の幸いだったかもしれません。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事