最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

最初は“他人”が自宅へ来ることに戸惑っていた患者さんが…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しばらくして、娘さんからお手紙を頂きました。抜粋して紹介したいと思います。

(以下お手紙の抜粋)

「私と両親とは離れた地で暮らしていますので、当初、父を自宅で介護・看病して看取るということはとても不安でした。一番近くにいる母も高齢で、父が退院してきた頃は痛みで動くことも歩くこともできない状況でした。そんな父と頼りない母を置いて関西に戻るたびに不安と罪悪感とでいっぱいでした。

 当時は正直なところ、GWを迎えられるかどうかと感じていました。しかし次に父と会った時、驚いたことに父が歩行器で歩いていたのです。その後は杖で。まさか、そんな父にもう一度会えるとは思ってもおりませんでした。

 コロナ前のまだ賑やかな銀座の歩行者天国を、車椅子の父と母と散歩し、父の行きつけの中華料理を食べられたあの日は、本当にうれしい一日でした。春には桜を見ることもできました。亡くなる数日前はつらそうにしていましたが、なぜか亡くなる1時間前には母と私と3人で穏やかに笑って過ごせていました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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