津波も引き起こす「空振」が健康被害をもたらすことはないのか

海底火山の噴火で被害を受けたトンガのノムカ島(ニュージーランド軍提供、UPI=共同)

「火山が噴火すると、火口から衝撃波が発生し、周囲の空気中を伝わって行きます。その速度はとても速く桜島の噴火でもマッハ1.0以上は普通にみられます。しかし火口から離れるに従いその衝撃波は急減し、音波に変化します。火山学では、これら空気中を伝わる圧力波のことを空振(空気振動)と呼びます。
通常、空振は短時間で収束するのですが、今回は爆発が大きく広範囲であったことからゆっくりと長く伝わりました。空振の進む方向では圧力が高まり、海面は大気によって押し下げられ、空振が通過した後は元に戻ろうとして海面が上昇します。そのため、今回は通常の噴火では見られない津波が形成されたのだと考えられます」

■日本では窓ガラスや扉を外した例も

 空振とはあまり聞きなれない言葉だが、空振により建物の窓ガラスが割れることもある。実際、2011年に起きた宮崎、鹿児島県境にある霧島山・新燃岳(しんもえだけ・1421メートル)の4回目の噴火では、霧島市の病院では1階病室の窓ガラス数枚が割れ、入院中の90代女性患者が顔を切り軽いけが。市内の小中学校3校でガラスが割れ、別の小学校では教室の扉が外れるなどの被害が出た。また霧島市内では市の総合支所や民家や宿泊施設など35軒でガラスが割れたという。

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