弁が2枚だからといって日常生活に支障を来すわけではなく、そのまま一生を終えるケースもあります。しかし、2枚しかない弁の大きさや配置のバランスによっては、片方の弁にかかる負担が大きくなり、徐々にズレを生じて血液の逆流につながったり、負担の大きさの違いから硬化を来すなどして、大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症といった心臓弁膜症を発症しやすくなります。
■大動脈解離を起こしやすくなるケースも
さらに、二尖弁の人は通常よりも大動脈が弱く、だんだんと大動脈の一部が膨らんで瘤になったり、大動脈解離を起こす場合があります。通常の人に比べ、大動脈解離の発生率が5~10倍になるという報告もあります。
大動脈解離は前触れなく血管が裂けて解離し、突然死する危険がある疾患です。普段は症状が出ていなかった二尖弁の人が、激しい運動などで血圧が急上昇したことにより急性の大動脈解離を起こし、そこから心タンポナーデ(心臓の周囲に体液や血液が大量にたまることで心臓が圧迫され、拍動が阻害される状態)になって死に至るというケースがあり得るのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」