上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

1週間の入院生活で感じた「感染対策」と「病院食」の重要性

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 前回、昨年11月初旬に小腸閉塞を起こして1週間ほど入院した時の体験談をお話ししました。その際、2000年代に入って発展した小腸内視鏡検査とカプセル内視鏡検査を受け、身をもって医療の進歩を感じることができました。

 ほかにも、入院して患者の立場になり、あらためて気づかされたことがありました。

 まずは、感染対策の重要性です。その頃はまだ新型コロナウイルスのオミクロン株が流行する前でしたが、どんな変異株であろうと、病気を抱えていてリスクが高い患者さんが集まっている医療機関で、クラスターを発生させるわけにはいきません。私が入院する際も事前にPCR検査を受け、陰性であることがしっかり確認されてから、その後の手続きが行われました。

 個室の病室から移動して外来まで検査を受けに行くときも、しっかりマスクを着用して、入室の前後は必ずアルコールで手指消毒を徹底しました。外科医にとって「手洗い」は基本中の基本です。外科医の手に付着した細菌などが手術中に患者さんに感染して感染症を引き起こすと、命に関わることさえあるため、手術に臨む前、外科医は必ず入念な手洗いを行います。もちろん、看護師や技師といった医療スタッフも同様です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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