感染症別 正しいクスリの使い方

【マイコプラズマ肺炎】マクロライド系抗菌薬が有効も耐性菌が問題に

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回も説明したように非定型肺炎であるマイコプラズマ肺炎にはペニシリン系やセフェム系といった抗菌薬は無効です。このためマクロライド系抗菌薬を使用することも多いのですが、アジアを中心にマクロライド耐性のマイコプラズマが増加しており、日本においても小児科領域の約80%に及んでいるというデータも出ています。

 マクロライド耐性マイコプラズマには、テトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬が有効とされています。しかし子供の場合、テトラサイクリン系抗菌薬は歯牙の着色やエナメル質の形成不全などを起こすことが知られているため、8歳未満では原則として使用できません。また、副作用の危険性などによりニューキノロン系抗菌薬も小児への使用が認められているものは、ほんの一部だけです。

 当連載を続ける中で、薬剤耐性菌の問題は本当に深刻な問題だと改めて実感しています。むやみな抗菌薬の使用は厳に慎むべきであり、逆に使用が必要な場合には中途半端に使わずに、十分な量を十分な期間、使用する必要があります。アクセルとブレーキをしっかり踏み分けることが大切なのです。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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