がんと向き合い生きていく

2羽のツバメは再発を心配するがん患者の心を救ったのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 十二指腸がんで3年前に手術を受けたCさん(70歳・男性)のお話です。

 がんはすべて取り除くことができて、担当医は「大丈夫。定期の検査だけはしましょう」と言ってくれています。それでも、手術前に比べて体重が10キロほど減ってしまい、いつまでたっても戻りません。1~2キロの変動はあっても、やはり減ったままです。

 体質が変わってしまったのか、特に寒さに敏感になっています。暖かい季節になって、健康のためと思い散歩は欠かさないのですが、むしろ足は細くなった感じです。

 あれだけ好きだったお酒も飲まなくなりました。飲む気がしないのです。たまにノンアルコールビールを飲んで、その時だけなんとなく酔った気になっています。

「あなたの趣味は?」と聞かれると、何もありません。囲碁、将棋、麻雀……みんな嫌いです。「なにか、楽しいことは?」と聞かれても、テレビは戦争のニュースばかりで嫌だし……。大リーグの大谷翔平と、大相撲の若隆景……くらいです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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