上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

逆流性食道炎がある人は胸の痛みの原因をしっかり鑑別する

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 実際、胸に痛みが出て心臓発作ではないかと疑って検査を受けてみたら、心臓に問題はなく逆流性食道炎だったというケースは少なくありません。もちろん、その逆もありえます。心臓発作だった場合は迅速に処置しなければ命を失うケースもありますし、逆流性食道炎の場合でも食道がんになりやすくなるので適切な治療が必要です。きちんと鑑別しなければならないのはそのためです。

 とりわけ近年になって、逆流性食道炎の患者数が右肩上がりに増えています。厚労省の調査によると、1970年代は人口の3%ほどでしたが、2010年には20%を超え、現在は30%前後とみられています。老若男女問わず、日本人の3分の1が逆流性食道炎を抱えているということで、新たな国民病だという声もあるほどです。

 われわれの胃と食道の境目には下部食道括約筋という筋肉があって、胃酸や胃の内容物が逆流しないような構造になっています。しかし、近年はこの筋肉が緩んでしまっている人が多いため、逆流性食道炎が増えているといわれています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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