実際、胸に痛みが出て心臓発作ではないかと疑って検査を受けてみたら、心臓に問題はなく逆流性食道炎だったというケースは少なくありません。もちろん、その逆もありえます。心臓発作だった場合は迅速に処置しなければ命を失うケースもありますし、逆流性食道炎の場合でも食道がんになりやすくなるので適切な治療が必要です。きちんと鑑別しなければならないのはそのためです。
とりわけ近年になって、逆流性食道炎の患者数が右肩上がりに増えています。厚労省の調査によると、1970年代は人口の3%ほどでしたが、2010年には20%を超え、現在は30%前後とみられています。老若男女問わず、日本人の3分の1が逆流性食道炎を抱えているということで、新たな国民病だという声もあるほどです。
われわれの胃と食道の境目には下部食道括約筋という筋肉があって、胃酸や胃の内容物が逆流しないような構造になっています。しかし、近年はこの筋肉が緩んでしまっている人が多いため、逆流性食道炎が増えているといわれています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」